農地法によって農地が守られていることは、前回ご説明しましたが、具体的にどのような規制で農地を保護しているかご紹介したいと思います。
今回ご紹介する規制は、農地又は採草放牧地の権利移動の制限です。
この制限は、農地法第3条において「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない 。」と定められています。
この条文の通り、農地を購入、または貸借する時には、原則的に農業委員会の許可が必要です。
しかし、第3条第2項では、これからご紹介する7つの条件に当てはまる場合は、権利移動の許可をすることができないと定められています。
1つ目の条件は、所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員が、農業に必要な機械の所有状況や農作業に従事する人の人数及び技術からみて、農地及び採草放牧地のすべてを効率的に利用すると認められない場合です。この農地及び採草放牧地のすべては、元々所有している農地も含まれます。
2つ目は、農地所有適格法人以外の法人が所有権などの権利を取得しようとする場合です。一般の法人は、原則的に農地に関する権利を取得することはできません。
3つ目は、信託の引き受けにより所有権などの権利が取得される場合です。信託会社や信託銀行などは、信託引き受けをして、農地の権利を取得することはできません。
4つ目は、農地所有適格法人を除く、所有権などの権利を取得しようとする者又はその世帯員が、農地や採草放牧地の取得後に農作業に常時従事すると認められない場合です。常時従事とは、農作業の従事の年間日数が150日以上あることを言います。しかし、150日未満の場合は農作業を行う必要がある限り、その農作業に従事していれば常時従事と認められます。
5つ目は、所有権などの権利を取得しようとする者又はその世帯員等が農業をするための農地の面積の合計が、農地や採草放牧地の取得後、北海道の場合では2ヘクタール、そのほかの都府県では50アールに達しない場合です。但し、農業委員会がこれらの面積の範囲内で別段の面積を定めたときはその面積となります。
6つ目は、農地や採草放牧地につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業を行う者がその土地を貸し付け、又は質入れしようとする場合です。農地を借りている人がさらに他の人へ貸す事を防止する規制です。
7つ目は、所有権などの権利を取得しようとする者又はその世帯員等が、農地や採草放牧地を取得後に行う農業の内容、位置、規模からみて、農地の集団化、農地の効率化など農地や採草放牧地の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合です。
農業委員会から権利移動の許可を得ずに他人に農地を売却した場合、所有権などの権利は買主に移転しません。違反者には、「3年以下の懲役又は300万以下の罰金」に処される場合がありますので、注意が必要です。
次回も引き続き、農地法の規制についてご紹介したいと思います。
不動産のご相談などありましたら、是非マルタ不動産をよろしくお願い致します。
農地法|e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229
マルタ不動産 髙木
皆様は、農地転用という言葉を見聞きしたことはありますか。
農地転用とは、いわゆる畑や田んぼなどの農地として使用していた土地を農地以外の目的で使用することです。しかし、この農地転用は、農地法によって規制を受けており、農地に家を建てたいと宅地に転用することが難しい場合があります。
相続などで農地を所有した時に、農業の経験がない場合は農地を自分が使える形に変更したいと考える方もいると思いますので、農地転用についてご紹介したいと思います。
まずは、そもそもの農地法の規制を受ける土地は、農地と採草放牧地の2種類あります。
同法第2条において、「「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。」と定められています。
そして、この定義に基づいて、農業委員会が農地かどうか判断します。この判断の際には、客観的な視点に基づく「現況主義」が採用されます。
「現況主義」では、登記事項証明書上では、農地ではない土地でも、農業に利用されていれば、農地にみなされます。そのため、逆に農地として登記されていたとしても、農業に利用されている形跡がないなど現況によっては、農地とみなされない事もあります。
しかし、休耕地や不耕作地だった場合は、農地として判断される場合もあるため、注意が必要です。
また、採草放牧地は、農地法上の土地区分であり、登記事項証明書上には、「採草放牧地」という地目はなく、「原野」や「牧場」という地目で取り扱われるため、こちらも注意が必要です。
次回は、農地法の規制内容についてご紹介したいと思います。
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https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229
マルタ不動産 髙木
皆様は、不動産における越境についてご存じでしょうか。
越境とは、家屋の一部や樹木の枝葉、ブロック塀、ガス管や給排水管といった所有物が隣地に侵入していることです。
越境物は、樹木の根や枝などすぐにわかるものもあれば、土地を測量したり、土地を掘ったりしてみて、初めて越境している事が判明する場合があります。
生活に差し支えなければ、特に問題はないように感じるかもしれませんが、例えば、住み替えや相続などで所有している一戸建てを売却しようとした際に、越境物がある場合、不動産の売買ではトラブルに繋がることが考えられます。
例えば、隣の家のブロック塀や屋根などが越境していた場合、そのままの状態で家を売却しようとすると、本来の不動産の価値よりも低い金額でしか、売買が成立しないような事が起きてしまうかもしれません。
また、隣の家の持ち主に越境を撤去してもらう事を買主と合意の上で不動産の売買契約を締結した場合、もし引き渡し日までに隣の家の持ち主が何らかの理由で越境物の撤去が出来なかった場合、契約不履行で売買契約が解除されるという事も考えられます。
元々住んでいた家なら越境物の存在を把握している場合もありますが、購入してから年月が経っていて忘れていたり、相続などで住んだ事がない家の場合は、越境物の存在を知らないこともあるかと思います。
このような不測の事態を回避するためには、不動産の売却を考え始めた際に不動産の契約書や重要事項説明書を確認することがとても重要です。
買主が見つかるまでの間に越境物の撤去を同時並行で進められると、売却がスムーズに行えますし、越境物の撤去は、内容によっては近隣トラブルにも発展する可能性がありますので、慎重に進めるためにも今一度所有不動産の現状把握をしてみると良いかもしれません。
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マルタ不動産 髙木
不動産登記法とは「家や土地の持ち主が誰か」「その不動産に借金の担保(抵当権)がついているか」などの情報を記録し、公にするためのルールを定めた法律です。これにより、トラブルを防ぎ、不動産取引を安全に行えるようになります。
登記の種類も、
・所有権の登記(家や土地を買ったときや相続・贈与で受け取ったときに必要)
・抵当権の登記(住宅ローンなどを組んだ際に銀行が「この家を担保にします」と登記する。
・賃借権の登記(借地・借家契約を登記すると、オーナーが変わっても契約が守られる。
不動産登記の原則は
公示の原則:登記することで権利関係を公に示す。
公信の原則:登記された内容を信頼して取引した者が保護される。
先取特権の原則:先に登記した者が優先的な権利を持つ。となります。
登記の手続きは、不動産の権利に変更があった場合、登記申請が必要となります。
申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行うことができます。
あなたが不動産を買う・売る・相続を行う際は、登記の状況を確認し、必要な手続きを適切に行ってください。
不動産のご相談などありましたら、ぜひマルタ不動産までお願いします。
マルタ不動産 鈴木
今回は、熱田区で行われるイベントについてご紹介します。
イベント名は、「第24回熱田ぐるりんウォーキング~にぎやか宮宿 熱田は尾張の台所~」です。
これは、あつた堀川にぎわい委員会と熱田区役所が主催のイベントで、2025年3月29日土曜日(小雨決行)に開催が予定されています。
集合場所は、以前ブログでご紹介したことがある白鳥山法持寺(熱田区白鳥一丁目2-17)で、受付時間は午前9時から午前10時まで、参加費は1人200円です。
今まで熱田ぐるりんウォーキングは当日受付のみでしたが、今回から事前申込(応募多数の場合は抽選)制の道案内人付きにぎやかプラン(定員100人)と当日受付で先着制ののんびりプラン(定員200人)が導入されます。
にぎやかプランは既に申込は終了していますが、20人×5グループに分かれて、午前9時から午前10時までの間に15分ごとにスタートして、ゴールに向かいます。
のんびりプランは当日受付のためこれからでも参加可能です。こちらは、受付をしてからご自身のペースでゴールに向かいます。見どころでは、ガイドさんによる説明を聞くことができるそうです。全体のゴールの受付が午前11時から正午までなので、時間配分には注意が必要です。
ウォーキングコースは、白鳥山法持寺→白鳥公園→熱田白鳥の歴史館→熱田魚問屋モニュメント→東海道道標→あつたnagAyaです。
約4キロメートルのコースで、所要時間はだいたい1時間半ほどになるそうです。
ウォーキングコースの途中で参加者全員に参加賞のきよめ餅がプレゼントされたり、当日もらえる台紙にスタンプを3つ集めてゴールすると完歩賞が貰えるそうです。
もしイベント帰りに不動産のご相談などありましたら、是非マルタ不動産をよろしくお願い致します。
熱田区役所ホームページ|第24回熱田区ぐるりんウォーキングを開催します!-にぎやか宮宿 熱田は尾張の台所-
https://www.city.nagoya.jp/atsuta/page/0000182701.html
マルタ不動産 髙木
皆様は、接道義務という言葉を見聞きしたことはありますか。
以前、ブログでセットバックについてご紹介した際に簡単に触れたのですが、接道義務とは、築基準法第43条の「建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。」というものです。
この接道義務は、建築物の敷地が道路と接することを義務づけることで、災害時の避難経路の確保や消防車や救急車などの緊急車両が建築物の向かう経路を確保することが目的です。
そのため、都市計画区域と準都市計画区域内が対象となり、都市計画決定されていない区域内には、接道義務はありません。
例えば、前面道路以外の三方を建物に囲まれた建物を取り壊して、その敷地を分割して、建物をそれぞれに建築する場合、道路に対して横並びに建物を建てる場合は、どちらの建物も前面道路に接しています。
しかし、何らかの理由で道路に対して縦並びに建物を建てたい場合は、手前側の建物は前面道路に接していますが、奥側の建物は前面道路に接することが出来なくなります。
そのため、奥側に建物を建てたい場合は、前面道路に接する間口が2m以上になるように敷地を分割しなればなりません。
また、昔ながらの住宅地には、建築基準法の道路よりも狭い道路にしか接していない敷地の建物が存在します。この場合は、建て替えが出来ないケースもあるそうです。
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建築基準法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201_20240619_506AC0000000053
マルタ不動産 髙木
皆様は、特定用途制限地域という言葉を見聞きしたことはありますか。
この特定用途制限地域とは、都市計画法第9条において「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域」とされています。
そのため、以前ブログでご紹介した用途地域以外の区域区分が定められていない都市計画区域内や準都市計画区域内の良好な環境づくりや環境維持を目的として、人の集中や騒音、振動などを発生させるおそれのある施設などの建築を制限するために定められることが多いです。その特性から、観光地や高速道路のインターチェンジ周辺などが定められているケースも多いです。
名古屋市内では特定用途制限地域は定められている地域はありませんが、愛知県内では、新城市の新城長篠準都市計画区域の全域が特定用途制限地域に定められています。
制限される建築物は、新城市を例に挙げますと、風俗営業施設、危険物の製造工場、貯蔵・処理施設、倉庫業を営む倉庫、床面積3,000㎡を超える集客施設、床面積10,000㎡を超える工場が対象となっています。
また、自治体によっては、ゴルフ練習場なども制限の対象に含まれることもあります。
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都市計画法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=343AC0000000100
新城市ホームページ|特定用途制限地域を決定しました
マルタ不動産 髙木
皆様は、土地を探したり、一戸建ての建築を進めたりする際に、「セットバック」という言葉を見聞きしたことはありますか。
セットバックとは、土地と前面道路の境界線を土地側へ後退して、前面道路の幅を広げることを意味しています。
建築基準法において、建築物の敷地は、幅員4m以上(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)の 道路に2m以上接しなければならないという接道義務が定められています。
防災の観点から行政は、消防車などの緊急車両が進入できる道路整備をしたいと考え、街づくりを行っていますが、自動車が一般的では無かった頃は、車が通ることを前提として道路が整備されていないため、幅員4m未満の道路があり、現在でも見かけることは少なくないと思います。
そのため、このような道路の幅員を4m確保するには、既存の建築物の敷地の一部が必要になりますが、既存の一戸建てなどに住まわれている方々に、今すぐ土地を明け渡してもらうことは難しいため、いずれ建て替える時に、土地をセットバックして建てる形としています。このような道路のことを「みなし道路」や建築基準法第42条2項で定められていることから「2項道路」と呼ばれています。
それでは、セットバックする幅をどのように決められるかについてもご紹介したいと思います。
これは、向かい合う土地の状況によって2つのケースに分けられます。
まず1つ目は、道路の向かい側が宅地の場合です。この場合は、道路の中心線中心線からそれぞれが水平線で2mずつする形になります。例えば、前面道路の幅員が3mであれば、中心線から境界線までの距離は1.5mとなるため、どちらも0.5mセットバックすることになります。
2つ目は、道路の向かい側が川や崖、線路などの場合です。この場合は、向かい側の境界線を動かすことが出来ないため、建物のあるこちら側だけで前面道路の幅員を4m確保することになります。先程と同じく前面道路の幅員が3mの場合、境界線を1mセットバックすることとなります。
土地を購入して一戸建てを建築したいと考えている場合は、セットバックが必要な土地かどうかは、とても重要な要素だと思います。
不動産のご相談などありましたら、是非マルタ不動産をよろしくお願い致します。
建築基準法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201_20240619_506AC0000000053
マルタ不動産 髙木
賃貸マンションや賃貸アパートなどに住んでいる方は、次の場所へ引っ越す際に「退去費用」が発生します。その退去費用とは、原状回復のために必要になる設備の修繕費用や、ハウスクリーニングの費用など、次の住人が住める状態にするために必要なお金のことを指します。しかし、住居は通常の使い方で使用していても時間ともに劣化していくものです。その時間と共に劣化したものまで、借主側だけが負担し入居当時の状況に戻すということはかなり借主側にとっては非常に負担が重くなってします。その為、一部は貸主にも負担してもらうということが、国土交通省で定められています。(原状回復をめぐるトラブルとガイドライン)
そこで今回はどのようなものが借主の負担になるのか、またどのようなものが貸主負担なのかをお話していきたいと思います。
退去時に支払わなくてもすむ費用の具体例について
・家具家電を設置したことによる床のへこみ
・電化製品の電気焼けによる壁の黒ずみ
・ポスターやカレンダーによって壁にできた跡
・画鋲やピンの穴(小さいもの)
・浴槽の補修費(経年劣化によるもの)
・台風や震災による損傷
・エアコンの内部洗浄(手の届かない範囲) etc.
のようなものがあげられます。つまり「通常消耗(だれが住んででもどんなに気を付けて暮らしていたとしても、人が住んでいれば少なからず傷んでしまうもののこと)」と「経年劣化(時間の経過によって品質が下がってしまうことで、直射日光で壁紙が変色したり、湿気で窓枠のゴムが傷んでしまうこと)」は借主が支払わなくてもよいものということです。
次に退去時に支払う必要のある費用の具体例について
・食べ物や飲み物をこぼしてできたシミ
・ものを落とした、家具を引き摺ったなどしてできたフローリングの傷
・ペットが付けた汚れ
・子どもの落書き
・タバコの臭いや壁の黄ばみ
・鍵をなくしたときの交換費用 etc.
のようなものがあげられます。ただしこれらも原状回復のためにかかる費用全てを負担するのではなく、貸主の負担となる費用を差し引いた分を負担する形になります。経年劣化や通常損耗による損害分を引いた分を、入居者側が負担する形になります。
今回はのガイドラインはあくまで、契約書に書いていなかったときに双方間でもめない為に役に立つものであって契約書のように法的強制力があるものではないので、契約書を上回って認められるものではないということは理解しておきましょう。